4月末にリリースし、1週間で50万本を売り上げた話題の新作『Mordhau』。Steamの全世界売り上げ上位にもその名を連ねている本作は、プレイヤーが騎士となって剣と剣をぶつけ合う近接戦闘主体の対戦アクションゲームである。
そんな本来ならばニッチなジャンルである本作になぜゲーマーたちは惹き寄せられているのか、実際にプレイしてみた感想を交えて紹介していこうと思う。
人気を博したゲームから受け継いだシステム
本作『Mordhau』はデベロッパーであるTriternionにとっての初作品となるが、そのベースには別開発のインディーゲーム『Chivalry: Medieval Warfare』(以下Chivalry)が存在している。
Mordhauの近接戦闘システムはこのChivalryのシステムとほぼ同じものであり、それに加えて『Mount & Blade』や『War of the Roses』といった中世を舞台にした他のゲームからも様々な要素を取り入れている。
Chivalryは2012年にリリースされて以来、熱心なファンコミュニティにより長年愛されているゲームであり、Mordhauの開発チームTriternionもその一員だ。Triternionは10人という小規模な開発スタジオだが、そのメンバーはChivalryやその他の中世、近接戦闘をテーマにしたゲームを数1000時間もやりこんだ熟練のゲーマーで構成されているという。
そんな熱狂的なユーザーが、近接戦闘というジャンルのゲームをリファインし、進化させたいと考えて作られたのがMordhauというゲームである。同ジャンルをやりこんだゲーマーが作る新作近接戦闘ゲーム、長年新作を待ちわびていたChivalryコミュニティにとって、このゲームはまさに期待の星だったのだ。
実際、Mordhau発売後はChivarlyでお馴染みのコミュニティサーバーが立っていたり、古株のプレイヤーを見かけたりと、Chivalryコミュニティからの移住がチラホラと見られる。そういったプレイヤー達がプレイヤーベースの維持やコミュニティの盛り上げに一役買っているということは疑いようもない。
シンプルながらも奥深い戦闘システム
では、その受け継いだ戦闘システムがどういうものなのか見ていこう。
本作は32vs32の大規模戦闘から1vs1の決闘までをカバーする複数のゲームモードを用意しており、そのどれでも基本となるのは近接武器による攻撃と防御の応酬だ。
武器による攻撃は繰り出す方向や攻撃方法を変化させることができ、それぞれでヒットするまでのスピード、ヒットする位置などが変わってくる。
これに対して防御側は、方向・方法関係なくタイミングさえ合えば防御できるパリィ、そして攻撃方向とタイミングの両方をあわせなければいけないチャンバーを駆使して防御と反撃を試みることになる。
1対1でも1対多でも、基本的には攻撃と防御を繰り返して相手のミスを待つか、もしくは様々なテクニックを駆使して積極的に相手のミスを誘うというのが戦闘システムの肝である。
上記の説明だと初心者にとってはハードルが高そうでは、と思うかもしれない。しかし、この攻撃と防御の応酬に関しては、言ってしまえば左クリックと右クリックをタイミング良く押すだけであり、近接戦闘であるためシューティングゲームのような繊細なマウス操作も必要ない。そのため初心者であっても武器さえ持ってれば即座に戦闘に参加できるというシンプルさがそこにはあるのだ。
また、本作の花形とも言えるゲームモード「Frontline」は最大64人(公式サーバーは48人)という大規模な戦闘を行うことになるため、多少操作がおぼつかなくとも周りに味方が居ればなんとかなる場面が多い。マッチの勝敗やスコアも試合後に貰える報酬にほぼ影響はなく、マッチのプレイ時間が主に影響してくる点も初心者には優しい点だ。
このように基本の戦闘システムはマウス1つで完結しているというシンプルさが初心者参入のハードルを下げている良い点だが、では、奥深さはどこにあるのか。
それは”積極的に相手のミスを誘う”という部分である。上記の基本的な攻撃方法の他に、攻撃を途中でやめて相手の防御ミスを誘うフェイント、攻撃方法を途中で変更するモーフ、リーチが短くスキも大きいが、防御に関係なくダメージを与えてスタンさせるキック、そして上でも触れた難易度の高い防御兼攻撃であるチャンバー。上級者同士の戦いになってくるとこれらの技が剣戟に織り交ぜられてくるようになり、戦闘に緊張感ある読み合いが発生するのだ。
この”読み合い”こそがMordhauにおける戦闘の醍醐味であり、楽しい部分だと私は感じる。相手の防御をうまく崩して一本取れると達成感が大きいし、逆にやられてしまっても悔しいながら相手のテクニックに感心することが多い。自身のプレイスキルの成長が如実に実感できるのは、プレイヤーとしてはゲームを続ける大きなモチベーションに繋がるだろう。
見事な爽快感を演出するビジュアルとサウンド
戦闘における駆け引きも大事だが、やはりプレイしていて楽しいと感じるのは、優れたビジュアルとサウンドエフェクトの功績も大きいだろう。
本作はUnreal Engine 4で開発されており、グラフィックやエフェクトはインディーゲームの中でも優れている部類である。モーションは若干ぎこちなさがあるものの、実質前作であるChivalryと比べるとその進化はめざましい。サウンド面でも、剣のぶつかりあう甲高い音や士気を上げるキャラクターの雄叫び、ヘッドショット時やキル確定時の個気味よい効果音など、随所で力が入れられているのがわかる。
また、本作にはゴア表現が含まれており、剣や斧で攻撃すれば手足や首が飛ぶし、ハンマーで頭を殴れば潰れてなくなる。ヒット時のサウンドエフェクトが小気味よいのも合わさり、複数人の首を同時に飛ばせた時などは実に爽快感を感じられる。
個人的には『Killing Floor』シリーズに並ぶほど気に入っているといえば、一部のユーザーには共感を得てもらえるだろうか。
個性が光る豊富なカスタマイズ要素
本作はマッチをプレイしてゲーム内マネーを貯め、気に入った防具や武器もしくはそれら用のスキンや装飾用のアイテムを購入できるのだが、そういったカスタマイズ要素の量が尋常ではない。
まずキャラクターの顔や体型をある程度自由に変えられるキャラクターカスタマイズ要素があり、そこから頭、首、肩、胴、腕、手、腰、脚、足にそれぞれ好きな防具や装飾品をつけることができる。それぞれの部位に選べるアイテムも各数十種類ずつほど用意されており、色やその組み合わせ、金属光沢の色味や汚れ具合も自由に選ぶことができる。さらに武器として装備できるアイテムが50種類以上ある上、それぞれに見た目を全体的に変えたり、刃や鍔、柄ごとに変えたりできるスキンも用意されているという徹底ぶりだ。
この豊富なカスタマイズ要素のおかげで、全身アーマー装備でもしっかりと自分の個性が出せるし、武器を変えればプレイスタイルも大きく変わるため、手軽に新鮮さを味わうこともできる。また、一部の非常に高価な防具やスキンの購入を目指してプレイを続けるというモチベーションにもつながっているといえるだろう。
さらに、武器として装備できるものの中には楽器も用意されていたり、農民ロールプレイ用の装備があったりと、適度なお遊び要素も含まれているのもこのゲームが幅広く楽しまれている所以だろう。これらのおかげで対戦ゲーム特有の息苦しさやギスギス感が緩和されている面もあり、コミュニティでも楽器のリュートに関するツールが登場するほどである。
今後の課題
筆者も既にプレイ時間が100時間を超えており、まだまだ楽しめる本作だが、今後の課題や不満点ももちろんないわけではない。
まず今後の課題の1つが新規マップの追加である。現在メインとして遊ばれるゲームモード「Frontline」では4つのマップしか選ぶことができず、また、そのうち1つはゲームバランスに大きな問題を抱えているためあまり遊ばれない。もちろん他のゲームモードであれば違った遊び方ができるし、選べるマップも増えるのだが、個人的にはFrontlineの大規模戦闘が楽しいので早いうちに追加してもらいたいところだ。
幸いにも現在新マップを作成していることが報じられているため、現在のアップデート速度から見てもそう遠くないうちには新しいマップが実装されることだろう。ただ、どうあっても小規模の開発であることは変わらないため、リリース速度を重視するあまりクオリティが著しく低下するということは避けてほしいところだ。
また、今後はMODツールが公開される予定もあるため、ユーザーがMODを作成できる環境が出来上がれば、マップ不足という不満は解消されるだろう。
もう1つの課題はサーバーに関する問題の多さだ。リリース初期にはプレイしてもXPやゴールドが得られないという不具合もあったし(既に解決・補填済み)、現在はサーバーブラウザからPingの低いサバーを選んでも日によってはPingが100を超えてしまうという問題もある。おそらく当初の想定を大幅に超えるプレイヤー数にサーバーが悲鳴を上げているのだろうが、 タイミングが重要な本作でPingが高いとプレイに大きく支障をきたすため、こういった問題の解消には是非力を注いでほしいものである。
まとめ
これまで長々とレビューを書いてきたが、本作『Mordhau』が大きく反響を呼んだ理由としては、
- 初心者から上級者まで楽しめる優れた戦闘システム
- 高水準のグラフィックと適度なゴア要素
- 戦場の迫力と爽快感を増すサウンド
- 個性を出せるカスタマイズ要素
- ストイックになりすぎない適度なお遊び要素
こういった点が上げられる。また、価格が3000円程度と非常に安価なのもプレイヤーの参入を促す良い要因となっているだろう。
現時点でも十分に遊べる本作ではあるが、ランクマッチの導入や新規マップの追加、MODツールの公開など今後のアップデートもいろいろと予定されているようなので、今から非常に楽しみな作品である。願わくばChivalryのように長年コミュニティから愛されるゲームになってもらいたいところだ。
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